2010年10月09日
香りの引き出し
Bonjour !
今日はしとしと雨が降っています。今日はジョン・レノンの誕生日。シンゴシェフも同じ天秤座です。
グールドのイギリス組曲が心地よく響きます。
さて、今日は香りの話。
昨日作った自家製オランジェット、これには丸子産の小みかんの果肉のコンポートを作る際に剥いた皮を使って作ったコンフィを使っています。
皮はよく洗ったものを何度かゆでこぼし、それを栗の渋皮煮や甘露煮同様、毎日少しずつ糖度をあげながら煮て中までじっくり糖分を含ませながらかつ軟らかく仕上げます。
上手く仕上がると透き通った綺麗なオレンジ色になります。
だいたい果物の加工には三温糖を使うのですが、この仕上がったコンフィのシロップを味見してみると、エッセンシャルオイルのネロリのような香りもするし、シナモンの樹皮のようなスパイシーな香りもあります。
みかんの果肉のコンポートの方は、ジューシーな柑橘系のみずみずしい香りがするのに対して、このコンフィのシロップは、精油成分が移し出された感じ。
先日触れた同じく丸子産のみかんの花の蜂蜜はやはり花由来なのでオレンジフラワーウォーターの香り。
同じ植物の部位によって、醸し出される香りがこんなに違うとは、驚きです。
おとといシンゴシェフに、
「オランジェット、食べる?」
と聞いたとき、彼はコーラを飲んでいた。
コーラとチョコレートは、絶対避けなければならない組み合わせです
。
チョコレートを食べて、もぐもぐした後コーラを口に含むと...カビの匂いになります
。
ついでに言うと、バナナと珈琲も相性が良くない。タバコの吸殻みたいな匂い
。
ガトーとして、バナナもソテーや甘味をつけるなどの加工がしてあって、珈琲も濃く甘いシロップやソースがベースのムース(韻が良い♪)になっていれば問題はないのですが。
本来なら、オランジェットには同じ柑橘系のベルガモットの香りがついた紅茶のアールグレイか、珈琲は、個人的な好みでブラジルの深めの煎りのものを合わせたい。エスプレッソもいいですね。
もちろん静岡のみかんの皮のコンフィなので、やや濃いめの緑茶や抹茶でも良いかも。
そんなことにはおかまいなく、アナナは飲み物なしでオランジェットだけぱくぱく食べる。
あとでちゃんと歯磨けよ~!
アールグレイ、と言えば、以前自由が丘の紅茶専門店〈セントクリストファーガーデン〉で働いていたとき、そこでわりと自由に飲ませてもらった紅茶の数々、こんなに美味しい紅茶ってあるのかと思っていました。
もともとフレーバーティーより茶葉そのままの紅茶が好きなのですが、ダージリンの麗しい茶葉から抽出されるマスカットを思わせる高貴な香り、キーマン(キームン)の上品なスモークの香り、ディンブラ、アッサム、ヌワラエリア(はあったかな)...みんな違ってみんないい、のです。
そこのアールグレイはわりととがった香りで好きだった。たまにカウンテスグレイも飲みたくなります。
セントクリストファーのブティックでは、エルダーフラワー・コーディアルというものを売っていて、消費期限が迫ったものを安く分けていただいたことが何度かあるのですが、これは、忘れられない味です。
愛読書のLesley Bremness著『完璧版 ハーブの写真図鑑HERBS』(日本ヴォーグ社)によると、エルダー(セイヨウニワトコ)は、“田舎の薬棚”とよばれているほど健康に役立つ用途が色々あるようで、漢方でも様々な使われ方をされているようです。
コーディアルは、カルピスのように水などで割って飲んだりするのですが、程よい酸味とアンズのような、何て言うんだろう、麝香っぽい香りもして、こういうものにこそ健康にも良いノンアルコールドリンクとしての未来がありそうな感じがします。
マカディア...に近いかな?マカディアも意外と好き。最近近所では見かけませんが。
今うちのお店でお出ししている紅茶は、たまたまお店に食べにきていただいたことがきっかけでお付き合いさせていただいている奈良のオーガニック茶園の方の紅茶です。
この月ヶ瀬健康茶園さんの夏摘みムーンロックは、私が大好きなキーマン系のニュアンスを含んでいて、アイスにしても美しい水色(すいしょく)が出て、喉越しが素晴らしい。
これからはホットが美味しい季節です。
作っている方がおおらかで優しいので、そういうのがやはり味にも出ているらしく、丸みと深みのあるいい味です。
電話でシンゴシェフが注文したとき、慢性鼻炎の症状が出ていると聞いて、アレルギーに良いお茶を同封してくれたり、そういう面倒見の良さがお茶を育てる際の気配りにもつながっているのでしょう。
いつも、おいしいお茶をありがとうございます♪
ソムリエを目指す人が使う教材に、nez de vinという小さいガラスの瓶に色んな香りが詰まったキットがありますが、これはけっこう高い。
フランスの調理学校に行っていたときにそういう養成施設に見学に行って、同様のものを嗅いだ記憶があるけれど、そういうキットだけでそのものの香りを理解するのは難しいだろうな、と思います。
例えば、春に咲く沈丁花や、今も開花の旬まっさかりの金木犀、あのぐらい毎日強烈にキンモクセイ、キンモクセイ、という香りを嗅いでいたら金木犀の香りはこんな感じだな、と頭の中で思い出すこともできそうですが...。
フランスの学校の来校講師の一人として、MOFのソムリエが来たことがあり、あるワインを口に含んでしばらくしたら、
「これは、僕の奥さんの足の爪の香りがします。」
と言い切った。
他にも色々言っていたような気もするけれど全く記憶に無い。その感想が強烈すぎて。
彼の夫婦の関係を垣間見たような(勝手にこちらが)恥ずかしい気持ちと同時に、意外と表現方法は自由なんだと思いました。
(フロマージュ(チーズ)の香りの表現でそんなこと言われたら絶対に立ち直れないと思いますが...。)
日本人には日本人なりの、フランス人にはフランス人なりの、それぞれの国の人なりに、またその中の地域なりに、香りの引き出しの中身って違ってくると思います。

開国したばかりの時に外国の人が日本に来て思ったのが、日本の群集はゼラニウムの匂いだっていうのも驚きです。
それが洗っていない衣類の匂いなのか、織物の匂いなのか、土の香りなのか、髪の毛の匂いなのか、つっこんで聞いてみたい気はするけれど。
自分で飲んだコルシカのワインがどうしても梅干しの香りに感じることもある。
ワカメ、海苔、山椒、柚子、紫蘇、鰹節、苔...ワインの中に感じることがあります。
ヒソップ、とかスイカズラ、とか言うより絶対引き出しの手前に入っている香りの記憶。
同じ柑橘系でも、お茶でも、外国の果物や茶葉の香りと日本の緑茶やみかんとではものすごい違いがあるし。
こういう色んなものが香り立つ季節には、自分の香りの引き出しに色んな新しい香りを加える良いチャンス。
お客様も、うちのお店でワインを飲んだときに何かの香りを感じたら、是非教えていただきたい。
そういうものを共有するのって、...なんだかとっても親密な感じがします。

今日はしとしと雨が降っています。今日はジョン・レノンの誕生日。シンゴシェフも同じ天秤座です。
グールドのイギリス組曲が心地よく響きます。
さて、今日は香りの話。
昨日作った自家製オランジェット、これには丸子産の小みかんの果肉のコンポートを作る際に剥いた皮を使って作ったコンフィを使っています。
皮はよく洗ったものを何度かゆでこぼし、それを栗の渋皮煮や甘露煮同様、毎日少しずつ糖度をあげながら煮て中までじっくり糖分を含ませながらかつ軟らかく仕上げます。
上手く仕上がると透き通った綺麗なオレンジ色になります。
だいたい果物の加工には三温糖を使うのですが、この仕上がったコンフィのシロップを味見してみると、エッセンシャルオイルのネロリのような香りもするし、シナモンの樹皮のようなスパイシーな香りもあります。
みかんの果肉のコンポートの方は、ジューシーな柑橘系のみずみずしい香りがするのに対して、このコンフィのシロップは、精油成分が移し出された感じ。
先日触れた同じく丸子産のみかんの花の蜂蜜はやはり花由来なのでオレンジフラワーウォーターの香り。
同じ植物の部位によって、醸し出される香りがこんなに違うとは、驚きです。
おとといシンゴシェフに、
「オランジェット、食べる?」
と聞いたとき、彼はコーラを飲んでいた。
コーラとチョコレートは、絶対避けなければならない組み合わせです

チョコレートを食べて、もぐもぐした後コーラを口に含むと...カビの匂いになります

ついでに言うと、バナナと珈琲も相性が良くない。タバコの吸殻みたいな匂い

ガトーとして、バナナもソテーや甘味をつけるなどの加工がしてあって、珈琲も濃く甘いシロップやソースがベースのムース(韻が良い♪)になっていれば問題はないのですが。
本来なら、オランジェットには同じ柑橘系のベルガモットの香りがついた紅茶のアールグレイか、珈琲は、個人的な好みでブラジルの深めの煎りのものを合わせたい。エスプレッソもいいですね。
もちろん静岡のみかんの皮のコンフィなので、やや濃いめの緑茶や抹茶でも良いかも。
そんなことにはおかまいなく、アナナは飲み物なしでオランジェットだけぱくぱく食べる。
あとでちゃんと歯磨けよ~!
アールグレイ、と言えば、以前自由が丘の紅茶専門店〈セントクリストファーガーデン〉で働いていたとき、そこでわりと自由に飲ませてもらった紅茶の数々、こんなに美味しい紅茶ってあるのかと思っていました。
もともとフレーバーティーより茶葉そのままの紅茶が好きなのですが、ダージリンの麗しい茶葉から抽出されるマスカットを思わせる高貴な香り、キーマン(キームン)の上品なスモークの香り、ディンブラ、アッサム、ヌワラエリア(はあったかな)...みんな違ってみんないい、のです。
そこのアールグレイはわりととがった香りで好きだった。たまにカウンテスグレイも飲みたくなります。
セントクリストファーのブティックでは、エルダーフラワー・コーディアルというものを売っていて、消費期限が迫ったものを安く分けていただいたことが何度かあるのですが、これは、忘れられない味です。
愛読書のLesley Bremness著『完璧版 ハーブの写真図鑑HERBS』(日本ヴォーグ社)によると、エルダー(セイヨウニワトコ)は、“田舎の薬棚”とよばれているほど健康に役立つ用途が色々あるようで、漢方でも様々な使われ方をされているようです。
コーディアルは、カルピスのように水などで割って飲んだりするのですが、程よい酸味とアンズのような、何て言うんだろう、麝香っぽい香りもして、こういうものにこそ健康にも良いノンアルコールドリンクとしての未来がありそうな感じがします。
マカディア...に近いかな?マカディアも意外と好き。最近近所では見かけませんが。
今うちのお店でお出ししている紅茶は、たまたまお店に食べにきていただいたことがきっかけでお付き合いさせていただいている奈良のオーガニック茶園の方の紅茶です。
この月ヶ瀬健康茶園さんの夏摘みムーンロックは、私が大好きなキーマン系のニュアンスを含んでいて、アイスにしても美しい水色(すいしょく)が出て、喉越しが素晴らしい。
これからはホットが美味しい季節です。
作っている方がおおらかで優しいので、そういうのがやはり味にも出ているらしく、丸みと深みのあるいい味です。
電話でシンゴシェフが注文したとき、慢性鼻炎の症状が出ていると聞いて、アレルギーに良いお茶を同封してくれたり、そういう面倒見の良さがお茶を育てる際の気配りにもつながっているのでしょう。
いつも、おいしいお茶をありがとうございます♪
ソムリエを目指す人が使う教材に、nez de vinという小さいガラスの瓶に色んな香りが詰まったキットがありますが、これはけっこう高い。
フランスの調理学校に行っていたときにそういう養成施設に見学に行って、同様のものを嗅いだ記憶があるけれど、そういうキットだけでそのものの香りを理解するのは難しいだろうな、と思います。
例えば、春に咲く沈丁花や、今も開花の旬まっさかりの金木犀、あのぐらい毎日強烈にキンモクセイ、キンモクセイ、という香りを嗅いでいたら金木犀の香りはこんな感じだな、と頭の中で思い出すこともできそうですが...。
フランスの学校の来校講師の一人として、MOFのソムリエが来たことがあり、あるワインを口に含んでしばらくしたら、
「これは、僕の奥さんの足の爪の香りがします。」
と言い切った。
他にも色々言っていたような気もするけれど全く記憶に無い。その感想が強烈すぎて。
彼の夫婦の関係を垣間見たような(勝手にこちらが)恥ずかしい気持ちと同時に、意外と表現方法は自由なんだと思いました。
(フロマージュ(チーズ)の香りの表現でそんなこと言われたら絶対に立ち直れないと思いますが...。)
日本人には日本人なりの、フランス人にはフランス人なりの、それぞれの国の人なりに、またその中の地域なりに、香りの引き出しの中身って違ってくると思います。
開国したばかりの時に外国の人が日本に来て思ったのが、日本の群集はゼラニウムの匂いだっていうのも驚きです。
それが洗っていない衣類の匂いなのか、織物の匂いなのか、土の香りなのか、髪の毛の匂いなのか、つっこんで聞いてみたい気はするけれど。
自分で飲んだコルシカのワインがどうしても梅干しの香りに感じることもある。
ワカメ、海苔、山椒、柚子、紫蘇、鰹節、苔...ワインの中に感じることがあります。
ヒソップ、とかスイカズラ、とか言うより絶対引き出しの手前に入っている香りの記憶。
同じ柑橘系でも、お茶でも、外国の果物や茶葉の香りと日本の緑茶やみかんとではものすごい違いがあるし。
こういう色んなものが香り立つ季節には、自分の香りの引き出しに色んな新しい香りを加える良いチャンス。
お客様も、うちのお店でワインを飲んだときに何かの香りを感じたら、是非教えていただきたい。
そういうものを共有するのって、...なんだかとっても親密な感じがします。
Posted byレストランPEPINat10:33
Comments(2)
arome
この記事へのコメント
ワインを好まれる方々
味覚と香り・・・・・・・・ete
いやー、ディープでございます,,ね
味覚と香り・・・・・・・・ete
いやー、ディープでございます,,ね
Posted by ヨクナルネット
at 2010年10月09日 10:42

> ヨクナルネットさま
風邪を引いて味と匂いが分からなくなると、本当に切なくなります。
それだけ普通の生活の中で色んな味と香りを感じているんだな、と。
静岡はお茶の香りがするところがあったり、自然もいっぱいあって子供にも良い環境だと思います。感性も豊かになるような気がします!
風邪を引いて味と匂いが分からなくなると、本当に切なくなります。
それだけ普通の生活の中で色んな味と香りを感じているんだな、と。
静岡はお茶の香りがするところがあったり、自然もいっぱいあって子供にも良い環境だと思います。感性も豊かになるような気がします!
Posted by レストランPEPIN at 2010年10月09日 16:16